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けあるな。 “ ときは今 あめが下知る ” などと…」
「の句を詠んだまでにございます。何か不都合でもございましたでしょうか?」
「……」
「他にご用がないようでしたら、出陣の仕度もあります故、これにて失礼致します」
光秀は会釈して、紹巴の前から去ろうとした。
紹巴はギリッと奥歯を噛み締めると
「あれは! を意味する句ではありませぬか!」
光秀の背に噛みつくように言い放った。
その、光秀の足が止まり、紹巴に半身を向けた。
「……謀反?」
まるで子供の冗談に付き合う親のような顔をして、光秀はめしい表情の紹巴を見据える。
「ち、“ ときは今 ” の『 とき 』は、明智氏の嫡流である『 氏 』のこと。
“ あめが下知る ” は、置き換えれば『 天下をる 』という意味になりまする。【生髮藥】胡亂服用保康絲副廠,可致嚴重副作用! -
あなた様は『 土岐氏の流れをむ己が、天下を治める 』と、そう詠まれたのではありませぬか!?」
「……」
「今、あなた様が天下を取るには、主君である信長公を追い落とさねばならない。もしや明智様は、まことに信長公を──」
「口をおみあれ」
光秀は振り返り、相手の言葉をるように低い声でめた。
視線の先の紹巴を、冷やかな瞳で見つめると
「謀反とは、何と不吉なことを。に対しても、また上様に対しても、実に無礼千万なお言葉にございますぞ」
あくまでも落ち着いた口調で、しかし、どこか殺気立つものをしながら、光秀は毅然として告げた。
紹巴は言い返すこともなく、粘るような目で光秀を見据える。
すると、ややあってから、光秀の面差しにやかな笑みが浮かんだ。
「されど、さすがは名にしう連歌師の紹巴殿にございます。某が詠んだ上の句一つに、
そこまでの意味をお悟りになられるとは、いやはや、お見事にございまする」
「…光秀様」
「しかしながら、物は言い様という言葉があるように、どんな句にも、作者の意図を無視して様々な解釈が出来るものです」
「何がりたいのです?」
「これは例え話にございますが、某が詠んだ五月雨の句が、まことに謀反を意味する句だったと致しましょう。
しかし、その後に続けて詠まれた紹巴殿の句とて、謀反に賛同する句とも取れましょう?」
何っ、という顔で紹巴は光秀の得意顔を見やる。
「紹巴殿の理屈で考えるのであれば、某が詠んだ句が『 土岐氏の流れを汲む己が、天下を治める 』と置き換えられるのであれば、
紹巴殿が詠まれた “ 花落つる 流れの末を せき止めて ” は『 信長様を討ち、その勢いを止めて下され 』とも解釈でき、
あなたが、某の謀反を後押しして下さっているとも読めるのですが──ですかな?」
「わ、わたしは決してそのような!」
「世間の人々というのは口さが無いもの。かような話を聞けば、誰もが連歌師・里村紹巴殿は謀反の協力者と、
…いや、頭の冴える者ならば、某をき付けた、謀反の真の首謀者と思い及ぶやも知れませぬ」
紹巴は思わず唖然となった。
紹巴自身は、光秀の句の裏の意味を察して、“ 花 ” を信長、“ 落つる ” に謀反失敗の意味を込めて、
『 信長様への御謀反は思い留まるように 』 と、める句を詠んだつもりであったが、
このような形で逆手を取られ、我ながら不覚と思った。
面差しをきつくしてゆく紹巴を見て、光秀はふっと忍び笑いを漏らす。
「ご案じあるな。あなた様の某の句に対する解釈がそうであるように、某の解釈も、ただの推測に過ぎませぬ」
「──」
「故に、もうお忘れ下さいませ。某も、ここであなた様と話したことは忘れまする。
記憶に