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「なるほどな!三津さんは優しさに飢えとるんなら俺がとことん甘やかす!それで俺のモンやな!」
善は急げ!と三津を追おうとした高杉の首根を吉田が掴んだ。
「玄瑞,こいつに三日の猶予も要らなかったよ。今すぐ放り出そう。」
「帰してもどうせ投獄だ。ここで始末しとくか?」
高杉に容赦ない言葉を浴びせる吉田と久坂を入江はにやにや見ていた。
だが頭の中は三津が中岡に見せたあの表情でいっぱいだった。植髮和織髮有何分別?一文了解哪種方式更適合你! -
『私にもあの顔はしてくれないなぁ。』
自分を見つめるあの顔が欲しい。どうやって引き出そうか。入江は静かに悟られぬように考えた。三津は仮自室に戻って上機嫌で針仕事をした。
中岡は自分と桂じゃ不釣り合いだと言わなかった。それが嬉しかった。
桂の方が苦労すると言った人は初めてだ。
『小五郎さんが私で苦労する事はないよなぁ〜。高杉さんとか長州の事で苦労しはっても。』
私の方が桂の女絡みで心配事が絶えないよと笑った。
「嬉しそうだね。」
「そう見えます?」
……と答えてハッとした。ごく自然に話しかけられたから普通に返事をしたがこの部屋には自分しかいない。
ゆっくり顔を上げると桂が笑顔で見下ろしていた。
「い……いつの間に。」
音もなく現れるのは心臓に悪いから止めてほしい。
「何がそんなに嬉しいの?何で中岡君にあんな顔したの?」
「あ……あんな顔……って?」
また間抜け面だったのだろうか?それは大いに有り得る。間近であんな笑顔を見せられたんだから馬鹿みたいに呆けてたに違いない。
「中岡君に恋したような顔してたよ。私がいるのに他の男にそんな顔するなんて許せないね。」
「は?恋?」
全く予想外のお言葉をいただいた。恋する顔とは一体?恋愛経験の浅いこの私が恋してる時の顔とは一体どんな顔なんだ?
「あんな顔久しく見てないのに中岡君にはするんだね。」
「いや,だから……。」
どんな顔か自分じゃ分からないんだと反論したかったが,それを聞く耳も持たずに桂は三津を押し倒していた。
「帰ったら……許さないから……。」
最高の笑顔で見下された三津は一気に血の気が引いた。
真っ青な三津に覚悟しといてねと追い打ちをかけて桂は部屋を後にした。
『何でやっ!』
がばっと起き上がった三津は誤解を解かねばと廊下に飛び出した。
理不尽極まりない。それならあんな間近に顔を寄せた中岡に問題があるだろう。
誤解は早いうちに解かなければ後々面倒になる。
三津が焦って廊下を走っていれば広間から中岡達が出て来た。
ぶつかる!と思い慌てて立ち止まってつんのめった三津に中岡が気付いた。
「お嬢さん見送りに来てくれたが!いやぁ嬉しいのぉ。」
三津に近寄るとわざわざ目線を合わせる為に腰を落としてまた近距離で爽やかに笑った。
そしてまた会う機会があれば今度はご飯でもと誘った。
断るのは失礼だと思った三津は喜んで!と答えた。三津からすればただの挨拶。中岡だって挨拶の一環で食事でもと言ったに違いない。
だが嫉妬を抱いた男はそう思わない。
『勝手に食事の約束まで。この警戒心のなさはどうすれば直るんだろうな?』
私の目の前で他の男と食事の約束なんてしないでほしい。それが本音。だけど社交辞令にまで嫉妬しているなんてみっともない。
本音をぶつけたいのをぐっと我慢して中岡を見送った。
「……で,三津はそんなに慌てて中岡さんを見送りに来た訳じゃないよね?」
吉田の言葉に三津は何しに来たかを思い出してチラッと桂に視線を向けた。
「なんだい?」
桂は態とらしく笑って首を傾げた。それを見た高杉以外の三人は,あぁと小さく声を漏らした。